今回はホテルレビューでも旅行記でもなく、少しライフスタイル寄りの話を書いてみたい。
アーリーリタイア後も旅を続けていると、目的地や景色だけではなく、その体験から新しい発想が生まれることがある。
最近の僕にとっては、それが「旅をしながら暮らす」という選択肢だ。
まだ実践していないが、一つの旅をきっかけに着想が生まれ、それが少しずつ現実味を帯びてきた。
今日はそんな途中経過を綴ってみたい。

鹿児島便の欠航が教えてくれたこと
きっかけは二か月前の鹿児島旅行だった。
空港システムのトラブルでフライトが欠航となり、鹿児島旅行を断念した。そのまま旅を断念するのも少し悔しかったので、翌日から房総半島の旅館を予約し、急遽一泊することにした。
結果的には、この予定変更が思いがけない気づきを与えてくれた。
都内から車で九十分ほどの距離なのに、地元食材を使った料理を楽しみ、温泉に入り、そのままゆっくり眠る。翌朝も朝食をいただいてから帰るだけなので、時間にも気持ちにも余裕がある。
これまで近場の旅というと、どこか「遠出の代替」という感覚があった。しかし実際に泊まってみると、それとは全く違う価値があった。飛行機で遠くへ出掛ける旅とは別に、「日常を少しだけ豊かにする旅」という楽しみ方が案外良いからだ。
旅のポートフォリオが少し変わってきた
それ以来、僕の旅の組み立て方が少し変わった。
これまで通り、月に一度は飛行機で遠くへ出掛ける旅を楽しむ一方で、月に一〜二度は近場の旅館へ出掛けるようになった。
最近よく探しているのは、一泊二人で三万円以内、二食付きという価格帯の旅館だ。豪華さを求めているわけではない。地元食材を活かした料理が美味しく、温泉があり、ゆっくり滞在できる。自分にとって価格と満足度のバランスが良い宿で十分なのである。場所によってはアルコールまで無料で含まれ、思っていた以上に選択肢は多い。
こうした旅を重ねるうちに、宿を見る目も少し変わってきた。「一泊する場所」ではなく、「ここなら三泊くらい滞在したら心地良さそうだ」という視点でみるようになった。
三日ほど滞在し、日中は周辺を散歩したり、自転車を借りたり、本を読んだり、温泉に入ったりする。観光地を効率良く巡ることだけが旅ではない。その土地を味わいながら数日過ごすことにも、十分な豊かな体験である。
「移住」ではなく「移動する暮らし」
そんなことを考えていたある日、ある旅館で一週間ほど滞在しているシニア夫婦と出会った。
その夫婦は、同じような長期滞在の人たちとも顔見知りで、テニスを楽しみ、それぞれのペースで宿での時間を過ごしていた。どうやら一つの宿だけではなく、各地を巡りながら長期滞在を楽しんでいるらしい。
その姿を見て、「カジュアルな旅館に少し長く滞在しながら過ごすのも人生後半のライフスタイルとして面白そうだ」と思った。
例えば僕の場合、自宅を二〜三年ほど定期賃貸に出し、その間だけ日本を地域ごとに巡る方法も考えられる。
ただ、その実現方法は地域によって変わるだろう。
沖縄なら那覇に賃貸を借り、そこを拠点にビーチリゾートや離島を巡る暮らしが合っていそうだ。一方、九州なら主要都市のビジネスホテルに4泊、旅館に3泊するルーティンで九州全土の温泉旅館を泊まり歩く方が面白いかもしれない。
つまり、その土地に合わせて旅のスタイルを設計していくという発想である。
まだ構想段階ではあるが、「住む」と「旅する」の間には想像以上に多くの選択肢がありそうだ。
思いつきを、現実へ近づける
アーリーリタイア生活での時間は、何か思いつくと、そこで終わらせずに、「本当にできるのだろうか」と調べたり、試算したり、小さく検証したりする。
例えば、このライフスタイルならどれくらいの費用になるのか。三泊ずつ旅館を利用し、その間をビジネスホテルでつなぐと、月額はいくらになるのか。自宅を定期賃貸に出した場合の収支はどうなるか。
さらに、一休で「一泊二名・三万円以内・二食付き・口コミ四点以上」という条件で検索してみると、沖縄でも三十軒以上、九州では七十軒近く、中国・四国や北海道でも十分な数の宿が見つかった。
「そんな暮らしが本当にできるのだろうか」という漠然としたアイデアが、「意外と現実的かもしれない」という感覚に変わった。
終わりに
サラリーマン時代の旅は、仕事の疲れを癒やし、また仕事へ戻るための一時的な時間だ。
一方、今の旅は、体験から新しい発想が生まれ、自分のライフスタイルや人生の選択肢そのものを広げている。
今回の「旅をしながら暮らす」という発想も、そんな一つの実験に過ぎない。
旅は思い出をつくるだけではなく、未来の暮らし方まで変えてくれる、そんな旅との向き合い方がリタイア後は一番しっくりする。
WATARU